一冊の本は、三つの手を渡ります。
描く手、刷る手、収める手。
そのどれが欠けても、
愛馬の記憶は「作品」になりません。
『週刊競馬ブック』『スポーツニッポン』『馬ライフ』—— 競馬の専門誌の表紙を、長く手がけてきた画家です。 馬主からの制作依頼も多く、元調教師の引退記念アルバムも手がけています。
一頭につき、二十点ほど。すべて描き下ろしです。 その馬の物語に合わせて、点数を増やすこともできます。 写真を引き伸ばすのではなく、生まれた日からの日々を、 一枚ずつ描き起こしていきます。
描かれた原画は、額装してお手元に残ります。 印刷したものではなく、画家が紙に描いた一点きりの絵です。 何点をお渡しするかは、ご相談のときにお決めいただきます。
画家は、この一行を読んで、画面いっぱいに湯気を描きました。 指示した覚えはありません。打ち合わせで生まれる絵ではない、ということです。
上の絵は、トップページに掲げた表紙原画の、 目のまわりだけを切り出して拡大したものです。 一本ずつ引かれた毛。瞳に置かれた、ひと粒の白。 紙に染みて広がった、青。
印刷とは、これを紙の上に「もう一度」起こす仕事です。 美術書や文化財の複製に使われる機械と、絵の具をよく受け止める紙を選びました。 水彩のにじみは、印刷でもっとも失われやすいものだからです。
※仕様は制作の進行にあわせて調整することがあります。
本を作ってしまえば終わり、ではありません。 三十年後にどこにあるか。それを決めるのは、器のほうです。
創業百年を超える、和歌山・紀の川の家具工房です。 経済産業大臣指定の伝統的工芸品「紀州桐箪笥」の技術を受け継いでいます。 本の収納箱と、展示用のブックスタンドを作っていただきます。
桐は、湿気を吸うと膨らみ、乾けば縮みます。 そうやって、箱の中の湿りけをひとりでに一定に保つ。 日本人が、着物と書物を桐に納めてきた理由です。 虫がつきにくく、燃えにくく、そして、軽い。
絵は、この世に一枚しかありません。
技が、その一枚を、渡したい人の数だけ写します。
匠が、その一冊ずつを百年先へ送ります。
現役の馬でも、引退された馬でも、
すでにお別れになった馬でも、同じようにお受けします。
まだ何も決めていない、という段階で構いません。